『孫子』リーダーの性格を観察して、攻めと守りを

こんにちは、古神道と東洋思想、兵法の研究家ヒデです。



第八 九変篇には、将軍たちにこれがあると軍・組織を破滅させてしまうという、

五つの危険・欠点が書かれています。

「将帥には、乗じやすい弱点が五つある。

一、 敵将が必死で、ひたすら戦うことしか考えないようなら、

これは容易に殺すことができる。罠に誘い込みやすいからである。

二、 敵将が生に執着するものなら、捕虜にしやすい。

三、 敵将がカーッとしやすい性格なら、

これを馬鹿にして、思慮分別を失わせれば、勝てる。

四、 敵将が潔癖すぎる性格で、度量のせまい性格なら、

これを侮辱して思慮分別を失わせれば、勝てる。

五、 敵将が情にもろい性格なら、

その部隊に苦労を強いるような方法をとれば、戦意を失わせることができる。

これらの欠点は、兵を用いる将帥として致命的なものであり、

戦いに敗れ、将帥の生命までも失うような大事は、必ずこれに原因している。

およそ将帥たるもの、これらの欠点が自分にもあることを反省し、

度量を広くして、柔軟な考えを持ち、知謀識量を養うことにつとめねばならない。」

大橋武夫 『兵法孫子』マネジメント社

「闘争心が旺盛で、決断が速いこと自体は、将軍にとって有益な資質である。

だが一方に沈着冷静な洞察力が伴わなければ、単なる怒りっぽい短期野にすぎない。

こうした将軍は、「どうした、怖くて進めないのか」などと侮辱・挑発されると、

頭にカッと血が上り、前後の見境なく進撃して、

まんまと敵の謀略にはまり込むのがおちである。

人格が高潔で、利欲に目が眩まないこと自体は、将軍にはぜひとも必要な資質である。

だが名誉を守ろうとする一念にのみ凝り固まって、

汚濁をかぶっても平然としているだけの図太さに欠けるならば、

やたらに気位の高い道徳家にすぎない。

こうした将軍は、「やい逃げるのか卑怯者」などと罵られると、

そのわずかな恥辱にすら耐えきれず、さっそうと戻ってきては討ち死にしたりする。

部下を愛護しようとする慈悲心それ自体は、

大勢の命を預かる将軍としては、なくてはならない資質である。

だがそれのみにこだわり、一方に非情な意志の強さを持ち合わせなければ、

単なる人情家に終わる。

こうした将軍は、兵士に難儀をさせては済まないとばかり、

あれこれ面倒を見ようとした挙句、次から次へと生ずる厄介事の前に、

心身ともに疲労し衰弱してしまう。

名将にも、矛盾する性格を幾重にも兼ね備える、

複雑にして調和のとれた精神が要求されるのである。」

浅野裕一 『「孫子」を読む』講談社現代新書

リーダーは、感情に左右されてはならないというだけではないし、

冷酷になれということでもありません。

豊かな感情とともに非情な理性も持ち、バランスをとるのです。

リーダーによってその組織の命運・個人の人生が決まるので、

自分自身をコントロールする高度な実力が必要なのです。

しかし、自分一人でこの実力を身につけるのは難しいでしょう。

教育・訓練により、この実力を身につけることができると思うので、

その機会が必要です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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