『孫子』部下が命を預けるリーダーとは~生死がかかる兵法

こんにちは、古神道と東洋思想、兵法の研究家ヒデです。

生死がかかる兵法・兵学・軍学のリーダー論は厳しいものになります。



「将軍の事は、静かにして以て幽(ふか)く、…

士卒の耳目を愚にして、これをして知ることなからしむ。

…人をして識ることなからしむ。

…人をして慮ることを得ざらしむ。」(第十一 九地篇 )

「将軍の表情態度は、冷静で奥深く、その心は測り知ることができない…

自分の考えていることをむやみに部下に知らせるようなことをしてはならない。

思考過程にあることを発表すると、

部下を誤らせ、また変更されることがあるため、部下の不信を買う。

指揮官の意思は十分に部下に知らせておかなければならないが、

それは決定された意思のことであり、

思索を練っている途中のもの、遠い将来に関するものなど、

変更を予想されることを

軽々に口から出してはならない。

敵を前にして戦い、全力を傾注している戦士に、

任務達成に直接必要のない情報を与えることは、これを惑わすことにしか役立たない。

名将は、同じ行動や同じ戦法を繰り返して、

人に手の内を悟られるようなこともしてはならない。

軍を配備する場所もいつも同じような地形を選定することなく、

ときには、わざと不利な場所を占領し、あるいはしばしば移動し、…


敵はもちろん部下にも、将の考えていることを判断できないようにする。」

(大橋武夫『兵法孫子』マネジメント社)

「行軍の意図目的を兵卒にあらかじめ知悉させるわけにはいかない。

要は、統率者への信頼である。」

(谷沢永一『「孫子」を読む』幻冬舎)

「戦争は非常時である。

将兵が周囲の出来事に惑わされて組織の秩序を乱さないように、

指揮命令以外のことには関心をもたないようにする。」

(中島悟史『曹操注解 孫子の兵法』ビジネス社)

人の生命と国家の命運がかかる戦争では、策略が駆使されるため、

敵に容易に悟られることがないようにすべきです。

それ以外の組織でも、各人が偏った情報・未熟な分析力で変に憶測をし、

不安がったり、適切でない行動をとる恐れがあります。

各人の作業に集中できなくなる恐れもあります。

そこでやはり、リーダーの判断過程を公表するべきでないと思います。

判断に悩むところを見せては部下が不安がります。

リーダーがするべきことは、演技でもよいので冷静沈着でどっしりと構え、

元気と自信にあふれていることを見せます。

そうして、各人が安心して作業に取り掛かれるようにさせることです。

弾丸砲弾が飛び交う中で、

指揮官が「伏せろ!」と叫んだらすぐ伏せないと

砲弾でやられてしまいます。

「どうして伏せないといけないんだ?」と質問している暇はありません。

指揮官の命に反射的に従わないと命を落とします。

つまり指揮官への信頼と命令に即従うこと。

そしてその命令は簡潔明瞭で、

どうすればよいのか、即わかるものであること。

そうでないと命を落とします。

「この弾の音は我々の方に飛んできているようだから、身の安全を確保するように」

と言ってたら、やられます。

「弾が飛んできている音だ」という理由はいらないです。

理由を告げると人間は本能的に検証しようとします。

検証していたら危ない!

また「身の安全を確保するように」とはどうすればいいの?

しかもどうしたらいいか各自の判断に任せられて、

戦場での極限の状態では正しい判断ができない…

あまり考えさせずに

指揮官の「伏せろ!」という端的な命令が、

命を守るうえで最適なのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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