神道を学ぶ上でとても有益な本の紹介をします。(詳しく書いたため、長文です)
『神道 見えないものの力』葉室頼昭著 春秋社
葉室氏は昭和2年生まれ。
大阪大学医学部卒、医学博士、外科医・形成外科医でありながら
55歳で神職になるための大阪国学院に入学、神職の最高位・明階を取得。
藤原氏の家系出身者しかなれない奈良・春日大社の宮司を務められた方です。
医学・科学の視点からの神道のお話が特徴的です。
今回はこちらの本で、
葉室氏の語り口・ニュアンスをぜひ届けたい個所は抜粋し、
それ以外は要約しました。抜粋はその旨、明記しております。
この記事の目次
均一になったら滅んでしまう!
宇宙の仕組みで、全体が次の部分の一部になるというのがある。
●原子全体が分子の一部になり、分子全体があるものの一部になる。
●細胞全体が胃や心臓など臓器の一部になり、臓器全体が体の一部になる。
●全体の人間が家族の一部になり、家族全体が国の一部になり、国全体が世界の一部になる
●地球全体が太陽系の一部になり、太陽系全体が銀河系の一部になり、銀河系全体が宇宙の一部になる
(抜粋)日本人が世界の一部になるんだから、決して世界の人が全部同じことをやるというのが国際化ではない。それぞれが全体の一部なんです。
細胞は心臓のグループになれば心臓の働きをし、胃のグループになれば位の働きをする。…全体がバランスをとって調和してはじめて、われわれは生きていくことができる。これが国際化だと思うんですね。
日本人が英語を勉強し、外国人の真似をして、外国人と同じことをするのが国際化だと考えている人がいますが、それをやったら人類は滅びる。全部が均一になったら滅んでしまうんです。平等というのは、みんなが同じことをするということではなくて、それぞれの特色を持って生きるということです。そしてお互いバランスをとるということが、本来の姿です。
男女の問題もそうなんですね。男女平等といっても女性と男性が同じようなことをするのが平等だと考えている人がいますが、女性は女性の生き方というのがある。男性は男性の生き方がある。神さまから与えられた生き方というのがある。それぞれが特色を持って生きて、お互いがバランスをとっていく。…「それは古いんだ」「今は時代が変わったんだ」と言いますが、人間が作ったものだけが変わるのであって、神さまの世界の鉄則というのは永遠に変わらない。…そういう変わらないものを知りなさいといつも言っているんです。
(小林:ユダヤの知恵で、みんなで話し合って、異論がなく満場一致になったら、
その結論は採らないというのがあります。
人それぞれ生まれ育ち・学び・経験・能力が違うはずなのに、
同じ見方・考え・結論になるのはおかしい、ちゃんと考えていないだろう、
赤信号みんなで渡れば…だと全員死んでしまう!
だから同じ結論・均一化したら、それは止めにするということなのです。)
治そうとしない人は、神さまも助けてくれない
日本がなぜ戦争をしたのか。なぜ負けたのか。どうして伝統の歴史を捨ててここまで落ちてきたのか。じっと見ていると、これもおそらくは、日本人の本来の姿に目覚めさせようとする神さまのお導きだと思うんです。しかし、人々は勘違いをしてしまって、例えばもう少し立つと幸せな世の中がやってくるというと、何もしなくてもやってくるように思う人がいますが、とんでもない話です。…いくら幸せな世界がやってくるといっても、努力しない人にはやってこないわけですね。努力した人に初めて神の幸せというのはやってくる。特に今の日本人は努力しないで幸せを得ようとするところに、とんでもない間違いがあるんですね。すべて努力です。…ですから、…偶然というものはない…努力しない人には幸せは与えられない。
病気になったらお医者さんが治してくれるとみんな思うわけでしょう。治るわけがない。自分で治ろうと努力しない人は、いくら医学でやろうと治らない。ただ医者は助けるだけです。自分で直そうとしない人は、永久に病気は治らないし、残念ですが死んでいくだけの話です。…ひとは助けてくれない。だから自分でやらなければならない。神さまだって自分でやらない人は助けてくれないんです。
(小林:20代のころ10年間教育業界(塾・家庭教師)にいたときの経験と被ります。
教えてもらうことばかり考えていて、自分で考える・解くことをおろそかにしている生徒は
理解力・成績の伸びも緩やかです。教師・講師は学習の手助けをするだけです。
自分で理解・解けるようにしないと伸びないです。
やる気アップしてもらうために、生徒をほめる・認める・合格した時の喜び・
入学後の学校生活をイメージしてもらうなどコーチング的手法を行ったこともあります。
しかし、ほめてもらうことや志望校の話をしてもらうことに期待するようになってしまい、
「~してもらう」受け身の人は難しいなと痛感しました。)
間違っていい、それを認める
親鸞上人「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」…普通の人が考えると逆に思うんですね。悪い人でも仏様が救うんだから、いい人は救われるというのが、本当だと思うでしょう。しかし親鸞の言葉は逆です。仏さまはいい人でも救う。だから、悪い人が救われるのは当たり前であると。…いい人というのは、善人というのではなくて、自分は悪かったと自覚していない人です。…悪人というのは、私が悪うございましたと目覚める人です。そういう人が救われるのは当たり前である。こういう意味なんですね。だから、一番救えないのは、俺は悪いことをしていないんだ、俺は善人だという人が、一番救えない。
神道の祓いと同じです。一生祓い続けて罪・穢れが祓われるということと同じです。自分は悪かった、間違っていた。だからもっと改めましょうという人は救われる。俺は悪くないんだ、俺は正しいんだという人は、神さまでも仏さまでも救えない。
(小林:孔子も論語の中で「君子は日に三省す」
(一日に三回は自分の行いに問題はなかったか、振り返る・反省する)
と言っています。書店の「三省堂」はここから来ました。
「自分が正しい」という思い込みが、戦争・トラブル・財産失う・健康損なう・不幸
になります。人間社会のほとんどの問題の原因が、これかもしれません。
だから、親鸞上人も神道も孔子も、同じことを強調しているのでしょう。)
苦しくても、前向きに良い言葉を使う
言葉というのは、現実に現すのが言葉でしょう。単なる妄想ではないんです。…言葉でいえば、それが形になっていく。それが日本語の言霊というものです。悪い言葉を吐けば、そこに悪い世界が現実に現れるということです。逆にいいことを言えば、いい世界が現れるんですね。…今はテレビでも何でも、悪いことばかり言っているから、悪い世界が現実に出てくるんです。…ですから、物事はいい風に解釈しなければならないといっているわけです。
春日大社でも、台風七号が来たときはずいぶんひどい目に遭いました。境内の木が200本以上倒れましたし、燈籠も倒れた。杉の木が倒れて回廊の屋根が壊れましたが、私はいつものように言ったのです。決して大変だというなよと。200本倒れたら、500本でなくてよかったな。燈籠が倒れたら、子供に怪我がなくてよかったな。回廊の屋根がつぶれたら、ご本殿でなくてよかったな。そういう風に考えなさい。そうしたら、必ず台風がいいふうに変わってくる。…
春日大社はご本殿のほかに61社の摂社・末社があります。ご本殿は20年ごとの式年造替でいろいろな方からのご奉賛をいただき、平成7年にご修理ができて、遷座祭りを行うことができましたが、その他にある61社のお社を全部ご修理せねばならず、考えただけで気が遠くなるようなことでした。…いろいろな方のご奉賛をいただいて修理できるようなことになったのです。…それでも限度があって、もうこれ以上のお社を修理することはとてもできない。春日の原生林の中のお社…台風7号で破損してしまったのです。そのためどうしてもご修理せねばならない状態となり、それらのお社すべての修理を行うようになりました。それを考えると、台風もまた神のお導きであるとしか言いようがありません。本当に、何事もよいように考えて、良い言葉を使うと、現実に神のお力が現れてくるということを改めて痛感したのです。
台風がなかったら直していないんです。台風が来たおかげで直せてしまう。そうすると、台風も神さまのお恵みかなと思うんです。だから、すべていいふうに考えたら、台風もプラスになるよということですね。それが言霊です。
悪い時にもいいといいなさいというのは、慰めとか、そういうものではなくて、言霊の力によって現実にそうなりますよということなんです。いくら大変で苦しくても、悪いことばかり言っていてはいけない。
神は日本人に期待
奈良の鹿は鹿の生活をしているところに、人間が近づいて行って、
一緒に生活しましょう、これが共生。
鹿を馴れさせて一緒に生活するというのは家畜。
西洋人の考え方は、家畜の考え方で自然を回復させようとする。
ここに木を植えたらいいとか、人間の考えで自然回復させようとする。
日本人は、林は林でやってもらう。
それに人間が近づいて、一緒に生活しましょうというのが共生。
大正時代にアインシュタインが日本に来た時に、世界は戦争で疲れ果て、破壊されるだろう。
その時に世界を救えるのは日本人である。
(抜粋)人間というのはどん底まで落ちないと目覚めないものだから、神さまはわざと日本人をどん底まで落とすのだろう。そして原点に戻らせるのだろうと思うのです。
この原点というのは、戦前とか明治維新とか、そういうことではなくて、…縄文時代にあると私は思っています。縄文時代というのは文明はそんなに発達していなかったでしょうが、日本人としての心は本当に最高の時代だったのではなかったろうかと思います。そして弥生時代になって大陸からいろいろな文明が入ってきて、モノの文明は発達したんだけれども、日本人の心がだんだん失われていったのだと思うんですね。
そして最後まで失われたのが今回の敗戦です。だから、日本人の心が失われたというのは、この戦争に負けたからではなくて、もう弥生時代から始まっていたと思うんです。それも神さまからのお導きで、その時はまだ文明はどれぐらい発達していたかわからないけれども、結局日本に文明を発達させたわけでしょう。その代わり心というのはだんだん失われて、今はほとんどゼロになっていますね。わざとそうさせたのではないかと思うんです。そして、とうとう、というか、やっと目覚める。そして最後に、精神文化と文明、その両方を持った本当の日本人がよみがえってくる。そして世界を救うのだと思います。そのために、わざわざ神さまは弥生時代から文明を与えて、文明と心の両方を日本人に経験させておいて、そして最後にどん底まで落としておいて、この両方を備えた世界唯一の日本人に生まれ変わらせるのだろうと私は信じております。
(小林:中国古典の孟子にも
「天は期待している人物に対しては、辛い思い・経験をさせて、能力経験をアップさせる」
というのがあります。)
亡くなった祖先が守ってくれる
(抜粋)あの世とこの世というのは続いているものだから、親父というのは死んだ過去の人ではなくて、常に我々に何かを伝えている。死んでも生きている人ということだと思います。死んでいても、親父というのは子供を守るものだなと思うんです。
…昔から、神事おじいさんやおばあさんのことを思い出すのは、おじいさん、おばあさんがそばに来ているからだといわれておりましたが、私はこれは本当のことだと思います。
…祖先を一生懸命に供養することです。そうすれば祖先もあの世で立派に生きてくれる。そして我々に命を伝えてくれると思うんです。…祖先を氏神様と祀り、いつも感謝して生活している。…祖先から見放された人は生きていけない。医者をやっていて交通事故に遭った人を見たらよくわかります。祖先の守りのない人は、今事故で死ぬかというぐらいあっさり死ぬ。ところが、祖先の守りのある人は、よくぞ助かったなという人もいる。祖先の守りのある人とない人というのは、はっきり分かれます。…祖先の守護というものを痛切に感じます。
(小林:「自分は運がいい」と思えたら、
それはご先祖さんたちが守護してくれているのでしょう。
そう思えなかったら、まずはご先祖さんに感謝します。)
歴史と伝統を学ぶことが、パワーの源
(抜粋)この戦争で日本が負けた時、こんな小さな国で世界相手に戦った日本人に皆、恐怖を感じたんですね。そして、日本人を骨抜きにしなければならないと考えたんでしょう。どうやるかというと、歴史と伝統を否定すれば、その民族は滅びる。命がなくなりますからね。そのために、日本人の歴史と伝統を教育というところから否定して、抹殺してしまったんですね。
(小林:世界の大国・強国には、
●米国
●ロシア・ソ連
●イギリス・大英帝国
●フランス
●ドイツ
●中国
がありますが、これらすべてと戦った唯一の国が日本です。
これだけでも、クレージーcrazy(狂ってる)と外国人から言われます。
明治維新1868年から敗戦1945年まで80年弱しかありませんが、
この短い期間に着物・ちょんまげの江戸時代から、軍事大国になりました。
戦艦大和やゼロ戦などの武器もそうですが、
命を惜しまない自己犠牲の日本軍人の姿は、他国にないものです。
敗戦・焼け野原になっても20年でビル街・首都高速道路・東京タワー・
新幹線・東京オリンピック誘致~この回復力
自動車や機械、電子製品の高性能さ、勤勉に働く日本人の姿。
もしかすると今も日本人に恐怖を感じているかもしれません。
どうして日本人はこれだけの底力・パワーを持っていたのか、
そのヒントが歴史・伝統です。)
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。