中今(なかいま)といいますが、この真っただ中の今を大事にする言葉です。
…過去も未来も存在しない、現在しか存在しない。
この一瞬一瞬を懸命に生きること、今を大事にすること、今何が出来るか・最善策は何か?
その繰り返しが永遠になるのです。
伊勢神宮は20年に一度の式年遷宮があります。
内宮と外宮をはじめ125の神社がありますが、総称して伊勢神宮といいます。
これら神社と調度品(神宮徴古館に一部は展示されています)をすべて新しくするのです。
伊勢の式年遷宮は、1300年前の飛鳥時代の天武天皇から始まりました。
戦国時代に途切れたものの、続いています。
木材などは新しいものの、様式は古墳時代のままです。
不易流行といいますが、不易とは変わらないもの。流行とは変わるものを意味します。
式年遷宮はまさに不易流行です。
同時代の法隆寺は、立て替えません。
仏教寺院は立てた時のままですが、神社は結構立て替えます。
●伊勢神宮は20年ごと
●出雲大社は60年ごと
●京都の下鴨・上賀茂神社は21年ごと(国宝に指定されたため修復のみ)
●奈良の春日大社は20年ごと(本殿の位置を変えない立て替えまたは修復~式年造替)
●大阪の住吉大社は30年ごと(修理のみ)
かつては香取神宮・鹿島神宮・宇佐八幡宮・諏訪大社などでも遷宮が行われました。
なぜこのようなことをするのか?
よく言われるのが、
1.古い建物には穢れがあるから、新しい社殿に移っていただくことで神威を増すことができる
2.景気対策
3.20歳の若手・40歳の壮年・60歳のベテランが一緒に遷宮に携わることができ、技術承継できる
です。
1は新築の建物は気持ちがよく神様も同様だと思われますが、
古いままの多くの神社は穢れているのか?神威が劣っているのか?疑問があります。
2の効果は商売人・職人にはあると思いますが、神社側は費用が掛かって大変です。
3はその面があるとは思いますが、30年ごとや60年ごとはどうなのか、年数は根拠にならないのではと思われるのです。
式年遷宮は常若(とこわか)を体現しています。
常に新しく若くという意味です。
木造建築は、腐りやすく朽ちるから、それを直そうとします。
「作ったから大丈夫」という油断・慢心が起こりません。
常に「次どうするか」を考える不断の努力をするようになります。
これに対して例えばギリシアの石造神殿のような頑丈な建物だと、作ったら安心してしまいます。
多少は修繕しますが、湿気やシロアリや火災などの心配をしなくて済みます。
木造建築は弱いからこそ、常に配慮します。
遷宮を行っても次の遷宮に向けて、木材や職人や資金を考える…それを千年も繰り返してきたから、神社が残っています。
常若とはそういう精神です。
伊勢神宮の建築は、柱を地面にそのまま立てる、掘立小屋です。
湿った地面に接している部分から、柱が朽ち始めます。
掘立だと20年程度しか柱がもちません。
そうならないよう地面に礎石を置いて、その上に柱を立てるのです。
法隆寺はそうなっているので1000年以上もっています。
なぜ1000年持たせる建築技術があったのに、天武天皇はその技術を使わせなかったのか?
常若を子孫に伝えるためです。