日本の伝統として、家を大事にする、年上や長男、本家・家系・家柄を大事にする点があります。
家制度です。
国も、「国家」と言います。
このような言い方は日本だけです。
天皇家・皇室という「本家」を中心に日本人がまとまっているという考え方です。
日本人自体一族のようなものなので、周りの人に親切にするという習慣。
支配者・権力者は、国民・民衆を子供のように慈しむ伝統です。
それができなかった支配者は滅んでいます。
自分の一族のことしか考えていなかった、平氏や北条氏などです。
近代的な大手企業であっても、家族経営・同族経営の企業が多い…
家族経営・同族経営の企業・老舗は、実は日本の95%を占めます。
同族企業とは、上位3位が親族で、持ち株比率が50%を超える企業を言います。
名だたる大企業がこれに該当します。
トヨタ、読売新聞、金剛組、鹿島建設、竹中工務店、
キヤノン、パロマ、リンナイ、YKK、講談社、岩波書店、朝日新聞、…
長男・本家などの中核をみんなで盛り立てていく集団の考えです。
まるで長男などが神輿で、それをみんなで担いでいく…そんなイメージ。
そのためには、個を出さない、主張しない、周りと違いをつくらないことで、
一体となり力を発揮します。
「私は」ではなく、「私たちは」という言い方です。
こうなると個人がないがしろにされる・犠牲になるのでは?疑問が生じます。
個人は自己主張しなくても、周りが気遣ってくれます。
結婚相手を紹介・あっせんしたり、夫婦関係・子供はどうなのかを聞いてきたり。
プライベートにかかわるので「余計なお世話」と受け取られる可能性が高いですが。
家柄などにかかわらず、優秀な者・実力のある者をリーダーにする考えもあるでしょう。
西洋はそうです。
しかし実力主義を打ち出すと、リーダー候補の中で熾烈な競争が起きます。
日本の古代王朝の中でも、皇子の間で暗殺や追い落としのはかりごと、
戦などが頻発しました。
そこで実力主義ではなく、血筋や家柄・長男で、決めるのです。
先代と同じ名前を付けることもあります。
襲名と言います。
何代目市川團十郎など、襲名することで先祖と一体となります。
先代・先々代と顔姿や性格などが同じで、あたかも先代たちがここにいるかのようです。
技・味などを先祖から引き継ぐだけでなく、
先祖自身やその精神・心意気なども引き継ぐのです。
目の前にいるのは子孫という違う肉体の人がいますが、
心や技は先祖がそのままいるという考えです。
世界史では、権力を握ると自分が皇帝や国王になります。
日本史では、平安時代に摂関政治の藤原氏は天皇になりませんでした。
他の貴族は追い落としたにもかかわらず、
天皇に娘を結婚させて次期天皇を産ませるだけで、
天皇の家臣で居続けました。
幕府を開いた源・足利・徳川も天皇にはならず、
天皇の家臣である征夷大将軍を天皇からいただいて、権力の座に座っていました。
これはなぜなのでしょう?
これも日本の本家である天皇から任命されたので、支配・権力の正当性を主張できます。
しかし天皇にとってかわってしまうと、その主張ができなくなります。
力ずくで反対勢力を抑えるしかありません。
天皇との関係が弱まった権力者は、権力の座から退きました・引きずり降ろされました。
●天皇に嫁がせた娘が子供を産めず、孫が天皇になる構図を作れなかった藤原氏
●後醍醐天皇と対立した鎌倉幕府・北条氏(軍事力は圧倒的に上だったのに)
●足利尊氏は後醍醐天皇と対立したものの、天皇家の別の家筋を北朝として天皇擁立することで、室町幕府の権威付け
●明治天皇を取り込んだ薩摩長州が錦の御旗を掲げ、兵力に優勢なはずの江戸幕府は急速に力を失っていった
天皇を崇拝し続けてきた、という人がいますが、正確には
天皇を信仰するのではなく、皇祖霊(天照大神)を信仰してきました。
これを皇祖霊信仰と言います。
神道には、自然信仰と先祖信仰、皇祖霊信仰があります。
それというのも…
三種の神器を受け継ぐことで、初めて天皇になります。
受け継いでいなければ天皇と言えません。
南北朝時代の北朝の5代の天皇たちは三種の神器を受け継いでいないために、
歴代天皇125代には数えられていません。
明治時代に南朝が正当とされています。
大嘗祭(だいじょうさい)といいますが、
天皇に即位してから初めて行う新嘗祭(にいなめさい)です。
これも行わなければ、半帝といって天皇の資格を満たしていないとされます。
血筋だけで天皇になるのではありません。
三種の神器を受け継いで大嘗祭も行い、皇祖霊の天照大神と一体になることで、
初めて天皇となるのです。
2019年に天皇陛下が即位されますが、秋に30年ぶりに大嘗祭が行われます。
皇居東御苑に仮宮が建てられて、そこで執り行われます。
祭りの終わった後1か月くらい一般公開されるようなので、
興味のある方は見学いかがでしょうか。