こんにちは、古神道と東洋思想、兵学の研究家ヒデです。
競争に勝つには、こちらが主導権を握ることです。
「人を致して人に致されず」(第六 虚実篇)
「先に戦場にいて敵の来るのを待つ軍隊は楽であるが、
後から戦場に駆けつける軍隊は疲れる。
戦いに巧みな人は、自分が主導権を握って相手を思いのままにし、
相手の思いのままにされることがない。
敵を自分からやってくるようにさせることができるのは、
利益になることを示して誘うからである。
敵を来ないようにさせることができるのは、害になることを示して引き留めるからである。
敵がよく休息を取って安楽であればそれを疲労させることができる。
兵糧が十分で腹いっぱい食べていればそれを飢えさせることができる。
安静に落ち着いていればそれを誘い出すこともできるのである。」
自分が主導権を握れば、自分に有利に戦争・競争・交渉を進めることができます。
主導権を握るためには、まず先に準備をして先に行動に移します。
これにより、有利な地形・協力者・ネットワークを手に入れることができます。
相手より有利になっており、また相手は準備が不十分なことから、
こちらは心理的に余裕ができます。
相手がまだ準備し終わっていないうちに攻撃すれば(奇襲)、勝つ確率が高くなります。
さらに先に準備・行動しているということは、
相手より先にその戦場・事業などの情報を得ていることになります。
それを分析判断する時間が相手より多くあり、早く対応できるし、
対応によってはこちらに有利に状況を変化させることができます。
ナポレオン軍を撃退したロシア軍、日本軍を泥沼化にさせた中国軍に共通するのは
以下の手法です。
負けたと見せかけて、敵を自らの奥深くまで誘いこみます。
前線は本国より非常に前に来ているため、
食料・医薬品・武器・弾薬を届けるのが困難になって来ます。
前線の部隊を物資不足にさせて、また不安感を覚えさせ、戦闘困難に陥れます。
これは相手を弱体化させるようわざと負けているもので、主導権は負けている側にあります。
しかし勝ち進んでいる側にとっては、主導権が握られているとは思わないのです。
「敵がきっとはせつけて来るような所に出撃し、
敵の思いもよらないような所に急進し、
遠い道のりを行軍して疲れないというのは、
敵の間隙をぬって敵対する者のいない土地を行軍するからである。
…
進撃した場合にそれを防ぎ止めることができないというのは、
敵の隙を突いた進撃だからである。
後退した場合にそれを追うことができないというのは、
すばやくて追いつけない後退だからである。
…
こちらが戦おうとする時期も場所も敵にはわからないならば、
敵はたくさんの備えをしなければならない。
敵がたくさんの備えをすると、その兵力は分散するので、
こちらから見た敵の兵力はいつも小数となる。
敵はたとえ大勢でも分散させて戦えないようにしてしまうのだ。
そこで、軍の形の極致は、無形になることである。」(第六 虚実篇)
多数の味方で小数の敵を討ち負かすのが、無理も損害も少なく楽に勝てる良い戦い方です。
たとえ味方の総兵力が敵の総兵力より少ないとしても、有利に勝てます。
その例として、古代ギリシャのテーベ軍六千とスパルタ軍一万が激突したレウクトラの戦いを挙げることができます。
総兵力的に劣勢なテーベ軍は、まず左翼軍を強大にして、これと対峙するスパルタ軍の右翼軍より兵力数を優勢にしました。
左翼軍を巨大にした結果、テーベ軍の中央軍・右翼軍の兵力数は少なくなりました。
しかしこの両軍は、その目の前にいるスパルタ軍の中央軍・左翼軍をけん制し挑発したり、わざと後退したのです。
そしてこれらスパルタ軍の中央軍・左翼軍が、
右翼軍を助けられないように時間稼ぎしたのです。
その結果、中央軍・左翼軍の救援を受けられないスパルタ軍の右翼軍は、
優勢なテーベ軍左翼軍により撃破されたのです。
強大なテーベ軍左翼軍は、同じようにしてスパルタ軍の中央軍・右翼軍と
順に各個撃破していきました。
その結果、総兵力数で劣るテーベは、スパルタに勝利したのです。
このことから
敵に対しては、手を広げさせ、実力を分散させることで
小数になり小さな力になったそれぞれのグループを一つ一つつぶしていきます。
それには、こちらの本心を悟られないようにし、
次にどのような手を打ってくるかわからないようにします。
先手を打って敵を焦らせます。
そして多くの備えをさせるようにするのです。
味方については、
「これだけ巨大だから」「力があるから」「たくさんの利益をとれるから」
などの理由で手を広げては、自滅してしまう恐れがあることになります。
情報分析も大事ですが、敵に惑わされない心理的な強さを持つ必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。