『孫子』ゆっくり急げ~早く到達しても無理があれば破綻する

こんにちは、古神道と東洋思想、兵学の研究家ヒデです。

早(速)く到着すれば有利かというと、そうとも言い切れないのです。



「軍争(機先を制するための争い)ほど難しいことはない。

廻り遠い道をとってゆっくりしているように見せかけ、

敵を利益で釣ってグズグズさせ、

相手よりも後から出発して相手よりも先に行きつく、

それが遠近の計(遠い道を近道にするはかりごと)

全軍こぞって有利な地を得ようとして競争すれば、

大部隊ではすばやく行動できないから、相手より遅れてしまう。

特に食糧や武器弾薬などの装備を運搬する輜重部隊は捨てられてしまう。

体力のあるものはたどり着けるが、

そうでない者は途中で脱落してしまう。

最初は大部隊だったとしても、

有利な地に着いたのはごく一部ということになってしまう。

速く着くために装備を軽くしては、着いたときに満足に戦えない。

速く着いたとしても、疲労困憊していては、やはり戦えない。

これでは戦闘に負けてしまう。」(第七 軍争篇)

我々は、有利になるように先手を打ったり、強行突破しがちです。

速さや近道を取ろうとしがちです。

それが必ず悪いとは言いませんが、そこには「無理」がつきものです。

その「無理」により後で災いが引き起こされるのですから、

「はやさ」に対しては慎重であることです。

古人も「急がば回れ」と言いました。

また別の例ですが、資格試験でもテクニックを使うと、

学力がそれほどでなくても、短期合格できてしまいます。

しかし、実務をやるのに十分な学力が付いていない可能性があり、

後で苦しむことになります。

短期合格を過度に目指さず、焦らずじっくりと学力をつけて行ったほうがよい、

とも言えます。

平成22年4月25日付、産経新聞に今回のテーマにちょうどよい社説が載っていましたので、

重要と思われる箇所を以下に書きます。

この社説を書かれたのは、論説委員の清湖口 敏(せこぐち さとし)さんです。

タイトルは『ゆっくり急げ世の中の道』です。

・人は急激な上昇期や連戦連勝の躍進期にはどうしても上や前しか見ず(見えず)、

そこに既に下降あるいは敗戦が兆していることには心が向かないものだ。

・「金や地位や権力をめざして社会の階段を上がっていく男は、

その上がっていく過程に必ず“無理”がある」藤田まことさん

現実には人は金や地位や権力、

あるいは色をも目指してこそ進歩する一面もあるのだろうが、

そこに無理はないかと見つめることが大事だと、藤田さんは教え、そして逝った。

・リコール問題に揺れたトヨタ自動車…

「成長のスピードが速すぎ、組織や人の成長が追いつかなかった」

トヨタだけでなく急成長した会社、勝ち続ける会社にはありがちの死角だろう。

・武田信玄の兵法を書いた『甲陽軍鑑』

「勝敗とは、十のものならば六分か七分、敵を破れば、それで十分な勝利」

「八分の勝利はすでに危険であり、九分、十分の勝利は味方が大敗を喫するもととなる」

(吉田豊訳)

・越前、朝倉氏の雄、朝倉教影の言葉を記した『朝倉宗滴話記』

「合戦上手の大将という者は、一度重大な敗戦を経験した人をいう」

「自分などは一生のうち、勝ち戦ばかりでとうとう負けずじまいだったので

…熟練者とはいえない」

(吉田豊訳)

・「一気に勝敗を決しようと急ぐ心を捨てよ」との軍事哲学が両書に共通…

急成長や連戦連勝にはどうしても慢心が生じてしまう…

アクセルだけでなく、ときにブレーキをかけることも大切だと戒めたに違いない。

以上が、産経新聞の社説です。

全体として、無理して近道・速さを追い求めないこと、

無理はないか見つめること、これを行なえるだけの勇気を出すこと、です。

孫子では、味方が無理をしないようにするため、

敵も含めた戦争全体をコントロールしようとしています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

妻・小林朋子のブログです。

夢をあきらめないというテーマで書いています。

https://ameblo.jp/doggytomoko/entry-12585893503.html



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