『孫子』~防弾鉄板のなかった日本軍機~パイロットがどんどん戦死して航空戦で劣勢に

こんにちは、古神道と東洋思想と兵法の研究家、ヒデです。



「亡国はまた存すべからず、死者はまた生くべからず」(第十二 火攻篇)

いったん戦争してもし失敗したとなると、

亡んだ国はもう一度立て直しはできず、

死んだ者は再び生き返ることはできない。

取り返しがつかないから、

目先の利益・一時の怒りで軽々しく戦争を起こしてはならない、

慎重であれ、ということです。

やや話題が変わりますが、太平洋戦争での日本海軍航空機は、

「その設計が機体の軽量性、航続距離、運動性を、強度や耐久性よりも重視

…パイロットや乗員のための装甲がなく、防漏燃料タンクもなかった。

このような航空機を破壊するにはほんのわずかの損傷で十分だった。

…生きのびるためには…速度と操縦技術に頼らざるを得なかった。」

(『太平洋戦争は無謀な戦争だったか』ジェームズ・B・ウッド WAC出版)

つまり、日本海軍機は防御がないために

簡単に撃墜できたということでしょう。

工場で航空機をどんどん製造し戦場に送っても、

片っぱしから撃墜されては、

数的に劣勢が深刻になり士気にも影響を及ぼします。

さらに航空機だけでなくパイロットも失うわけですから、

熟練パイロットがどんどんいなくなります。

新人パイロットを送り込むことになりますが、

操縦技術が未熟であることも多かったでしょう。

このように航空戦力はどんどん落ちていったと考えられます。

以上のことで、軽量化など合理性を追求して、

つまり一時の利益にとらわれて、人の安全を軽視したために、

全体の力が落ちてしまい、回復できなかったということです。

企業でも安易なリストラや成果主義などの導入で、

より本質的なものを損じて、

全体の力が落ちてしまったのでしょう。

「利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危きに非ざれば戦わず。」

(第十二 火攻篇)

有利でなければ行動を起こさず、

利得がなければ軍を用いず、

危険が迫らなければ戦わない。

それをやることで味方に利益となるか・価値があるか、

あるいはやらないと損害・危険になるか、

ということをろくに考えず、

「やらないよりやったほうがいい」

「とにかく頑張ろう」

「とりあえずやっておこう」

ではいけないということです。

情況判断してからはじめて行動を起こすという考えは、孫子を貫く考えです。

「兵とは国の大事なり。…廟算する…」(第一 計篇)

→ 戦う前に勝ち目があるか勝算を見なければならない

「彼を知りて己を知れば…」(第三 謀攻篇)

→ 味方と敵の戦力・状況を把握し、戦うか否か・作戦を決める

「兵の形は実を避けて虚を撃つ。」(第六 虚実篇)

→ 敵が備えをしている実の所を避けて、隙のある虚の所を攻撃する

その他、地形ごとの対処の仕方、敵の様子から情況を判断する(第八 九変篇 以下)

行動することでどういうプロセスをたどっていかなる結果が生ずるか、

得られる利益や回避できる危険を考えるのは難しいですし、

想像する事柄・机上のデータのため

仲間に説明し理解してもらうのも容易ではありません。

しかしこのような細部と思えることまで配慮ししっかりできるからこそ、

生き残れるのだと思います。

「火を行うには必ず因あり、火をとばすには必ず素より具う。

火を発するに時あり、火を起こすに日あり。」

(現代語訳)

火を使うには必ず条件がいる、火をとばすにも必ず道具の準備がいる。

火攻めを始めるには適当な時・日がある。

「火の内に発するときはすなわち早くこれに外に応ず。

火の発してその兵の静かなるものは、待ちて攻めることなし。

火 上風に発すれば下風を攻めることなかれ。

昼風には従い夜風は止める。」

(現代語訳)

味方の放火した火が敵の陣営で燃えだしたときには、

すばやくそれに呼応して外から兵をかける。

火が燃えだしたのに敵軍が静かな場合には、

しばらく待つことにしてすぐに攻めてはならない。

風上から燃えだしたときには風下から攻撃してはならない。

昼間の風は利用するが、夜の風は止める。

火攻めは甚大な損害を与える点で、効果的な攻撃方法です。

しかしあまり深く考えずただ単に使うのでは効果は薄いし、

風下から攻撃する場合のように逆に味方に害を及ぼします。

合理的に最大の効果が出るように使うべきです。

そのために火攻めの性質と使い方を把握しなければなりません。

ここで言う「火攻め」とは大きな結果を産み出すことから、

現代の組織での人材やシステムと置き換えることもできます。

本来持っている力を発揮できるよう、

適材適所や適時投入、限界の見極め、情況判断などを行う必要があります。

『孫子』の背後にある基本的考えは、

軍事だけではなく、非軍事の組織運営や活動などにも共通していると考えます。

より極端に言うと、その基本的考えを軍事に応用したのが『孫子』であり、

基本的考えの具体例の一つが『孫子』であると思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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