こんにちは、古神道研究家のヒデです。
古事記のメッセージを簡単にわかりやすく説明します。
日本の神々は全知全能でも完璧でもありません。
未熟でも向上しています。
そのようなエピソードを紹介します。
この記事の目次
1.イザナギ命のエピソード
①感情を抑えられなかった
イザナギ命とイザナミ命は、神々の中で初めて結婚しました。
日本列島をはじめ、たくさんの子産み。
ところがイザナミ命は火の神を産むと、わが子の火によって焼けただれて死んでしまいます。
最愛の妻を失ったイザナギ命は、怒りと悲しみのあまり、わが子を斬り殺してしまいます。
解釈はいろいろとありますが、
「神なのに感情を抑えられず、衝動的に自分の子を殺すのか?」
②妻との約束を破る
そのイザナギ命は亡き妻のいる黄泉の国へ向かいます。
生者は死者の国に行ってはならない掟があり、周りの神々は止めたのに行ってしまいます。
やっとのことでイザナミ命と会えたのですが、イザナミ命からは
「黄泉の国の食事をしてしまったので、黄泉の国の一員になってしまいました。
戻れないか、黄泉の国の王と交渉するので、それまで待っていてほしい。
それまでは中に入ってこないで」
と言います。
その場所の料理を食べると、そこの一員になってしまうという
「同じ釜の飯を食う」
が神話の時代からあったことがわかります。
祭事の後に参加者みなで飲み食いをする直会(なおらい)という行事がありますが、
それもここからきています。
捧げものに入った神の力の入った飲食物をいただくことで、
神の力を取り入れるという意味がありますが、
一緒に飲み食いすることでみなの結束を高める意味合いがあります。
ところがイザナギ命はその妻との約束を破ってしまいます。
櫛に火をともして(一灯だけ)中の様子をうかがいに行きます。
この死者の国での動作が「一つ火」として神道では忌み嫌われます。
火を一つだけ灯すのは不吉と。
怒ったイザナミ命からは離婚されてしまいます。
③末っ子スサノオに手を焼く
失意のうちに地上世界に戻ったイザナギ命は三貴神を産みます。
父イザナギ命は子供たちに指示を出します。
●天照大神は高天原
●月読命は夜の世界
●スサノオ命は海原(地上)
を治めよと。
ところが末っ子のスサノオ命は母親恋しさに泣いてばかりで、
「母のいる黄泉の国へ行きたい」と。
スサノオ命は、熊野大社や氷川神社で祀られている英雄神ですが、
母恋しさ・甘えん坊なところがあったのです。
そのスサノオ命に対してイザナギ命は激怒して「出ていけ!」とやります。
ここは父イザナギ命の配慮不足・コミュニケーション不足だったかもしれません。
2.スサノオ命のエピソード
①はちゃめちゃに乱暴
スサノオ命は黄泉の国に行く途中、高天原の天照大神に挨拶しようとします。
これを天照大神は「高天原奪いに来た」と誤解します。
武装してスサノオ命を待ち受けます。
そうではないとスサノオ命は弁明し、スサノオ命が正しいことが証明されました。
スサノオ命は「俺が正しかったんだ!」と勝ち誇って乱暴を働きます。
天照大神は弟を疑った負い目もあったのでしょう、
スサノオ命の乱暴に目をつぶり、かばうこともありました。
しかし忍耐の限度を超えたのか、天岩戸に引きこもってしまいます。
天照大神に出てきてもらうため、高天原の八百万の神々は協議します。
そこで神々は、
天照大神が引きこもっている天岩戸の前で大宴会を広げます。
踊りで盛り上げ役の天細女命(アメノウズメ)は、
半裸で踊り、神々は大騒ぎ(笑)
外がやけに騒がしいので「何事か」と天照大神は気になります。
岩戸を開けて外を確認しようとする天照大神に対し、
「尊い神が現れました」と鏡を見せると
そこには天照大神が。
「あなたがいてもらわないと困る」
というメッセージです。
神社には鏡がご神体であることが多いです。
「かがみ」は、「かみ(神)」が「が(我)」を挟んでいます。
鏡に映る参拝者の姿…
「あなたが尊い神なんですよ、
我を取り去れば神になります、
私利私欲や憂いなどを取り去りなさい」と。
力持ちの手力男命(タヂカラオ)が岩戸を開けて、
天照大神を外に連れ出すことに成功したのです。
●アイデアを思い付いたのは、天思兼命(アメノオモイカネ)
●祝詞と言葉で盛り上げたのが、天児屋根命(アメノコヤネ)
●踊りで盛り上げたのが、天細女命(アメノウズメ)
●榊・勾玉・鏡など演出したのが、布刀玉命(フトダマ)
●天岩戸を広げて天照大神を連れ出したのが、手力男命(タヂカラオ)
●ほかの神々は爆笑・大騒ぎする役割
このことから、得意なことで活躍すればいいのであって、
それぞれ役割がある、それに注力せよとのメッセージが込められています。
そして神でさえも過ちをおかすことなく、生きていくなど不可能です。
失敗を反省し精進・改善すればいいのです。
罪と言いますが、包む・慎むが語源と言われます。
本来の自分が隠されている(包まれている)のは誰にでもありうることです。
それだから、お互い様で許し合います。
②ワルが役立った
ヤマタノオロチを退治する神話があります。
身体が山ほど大きいオロチを、真正面からまともに戦ったら、
勇猛なスサノオでも勝ち目がありません。
スサノオはオロチに酒を飲ませ、
ぐでんぐでんに酔わせて倒れたところを退治。
スサノオ命は荒くれの神として、他の神々にも悪さしてきました。
そのワルの経験が役立ったのでしょう。
これが正統派(?)正直者の神だったら
オロチに酒を飲ませてやっつけるという方法は、
思い浮かばなかったかもしれません。
どんな経験も役立ちます。
③最後に幸せな家庭を築く
スサノオ命は、甘えん坊で調子に乗って悪さし放題でした。
神々から疎まれて追放。
しかし最後には化け物を退治して幸せな家庭を築きます。
途中いろいろなことがあっても、最後に勝てばいいのです。
ヤマタノオロチに生贄とされるはずだった櫛稲田姫(クシイナダヒメ)は、
命が助かっただけでなく、スサノオ命が出雲の王となり、
めでたくその妃になりました。
お祀りしている八重垣神社(島根県)は、縁結びのご神徳とされます。
スサノオ命と櫛稲田姫を祀る氷川神社
(大宮が本社で、埼玉県・東京都などに多くある)は、
開運や縁結びです。
3.大国主命のエピソード
①いい人だけど…
大己貴(オオナムチ)命は、大国主命ともいいます。
袋背負いの像が有名です。
美しい姫神がいると聞いて、
兄神たちと大己貴命は、その姫神のもとに求婚に行きます。
兄神たちは重い荷物を弟の大己貴命に押し付けます。
大己貴命は不平不満・愚痴を言わず、
他人の荷物を肩代わりして引き受けた姿です。
因幡の白兎の話があります。
ワニザメに毛皮を剥がれて瀕死の重傷の白兎を見ていられず、
他人の重い荷物を持って先を急いでいるのに、
無視して通り過ぎませんでした。
大己貴命は、白兎に治療法を教えます。
ここから大己貴命は薬の神様ともされます。
遅れて到着した大己貴命は、汗びっしょり。
重い荷物で着物もしわが寄っていたでしょう。
その大己貴命を姫神は気に入ります。
そのため兄神たちは嫉妬で大己貴命を何度も殺します。
しかし母神などの力でそのたびに生きかえります。
何度も殺されることに母神は、
「何度もこんなことになるのは、お前が未熟だからだ。強くなって来い」
と言って修行に送り出します。
殺す方を叱らず、殺される方を叱っています。
優しい、黙々と行う、愚痴を言わないだけでは単なる「いい人」にすぎません。
リーダーとなる神なら、そのようなことではダメです。
優しさに厳しさ・力強さも付け加えることで、
のちに大国主命と呼ばれる大人物に成長したのです。
②スサノオ命のもとで修業
荒ぶる神のスサノオ命のもとに修行に行きました。
大己貴命は、蛇とムカデ、蜂の部屋を案内されました。
とてもじゃないが、落ち着いてゆっくり寝られない部屋です(汗)。
しかしスサノオ命の娘スセリヒメが大己貴命に一目ぼれし、
対処法を授けます。
助けを借りることの必要性
~バカ正直に自分の努力だけで対処しようとしたら、
命がいくらあっても足りない…
またスサノヲ命から自分の髪の毛の間にいるムカデを無くせと言われます。
大己貴命は赤土を口に含んで吐き出して、
あたかもムカデをかみ砕いているように見せかけました。
どうすれば自分をよく見せられるか?も学びました。
野原で周りに火を付けられ、焼き殺されかけたこともあります。
このときネズミに巣穴へ導かれます。
何度も野焼きにあっているネズミは対処法を知っています。
一人の知識・できることは限られるので、現場の人・物・状況を大事にする、
ネズミだとバカにしてはならない、のです。
無事スサノオ命のもとで修業・試練を潜り抜けた大己貴命は、
スサノオ命から大国主命という名をおくられます。
③天狗になっても…
大国主命は、手のひらに載る身体の小さな神に出会います。
どういう神か誰にもわからなかったものの、案山子(かかし)に話しを聴くことで、
少彦名(スクナヒコナ)命ということが判明。
少彦名命を国家経営のパートナーにします。
自分とは違う視点・能力を持ったパートナーが必要で、
大国主命は外見・経歴などで判断していません。
案山子という活動的ではない者にも教えを請います。
国づくりが成功した後、謙虚な大国主命ですら、
自分の力で成功したのだと天狗になったことがあります。
いさめる者が海から現れる~それは、もう一人の自分自身でした。
自分を見つめなおす・反省する姿勢を示しています。
4.山幸彦・海幸彦のエピソード
山幸彦・海幸彦の話があります。
海で釣りをしたくなった山幸彦は、海幸彦に道具を交換しないかと提案。
山幸彦は海で釣りをしますが、一匹も魚を得ることができなかっただけでなく、
海幸彦の大事にしていた釣り針をなくしてしまいます。
山の専門家である山幸彦は、
山の気象や猪・鹿を捕まえること、山菜や薬草には詳しいです。
しかし専門外の海のことは全く知らないし、うかつに踏み出ると痛い目にあいます。
それぞれ得意分野があるから、不得意分野に手を出すな、とのメッセージです。
天孫降臨では、高天原の神々が
皇室の祖先ニニギノ命を中心に地上世界に天下ってきます。
これは、この世を高天原にするということで、
みなが幸せに暮らせる世界にすることを意味します。
天国や極楽は死んでからの話ではなく、
生きている現在を幸せにするというのが神道の考えなのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。