『孫子』兵法書の冒頭に書いてある文章は…

こんにちは、古神道と東洋思想、兵学の研究家ヒデです。

戦い・争い・競争…リスクを踏まえて軽々しく戦いに入るな、

という戒めが冒頭に出ます。



「兵とは国の大事なり。死生の道、存亡の道、察せざるべからざるなり。」(第一 計編)

戦争とは国家の大事である。

(国民の)死活が決まるところで、(国家の)存亡の分かれ道であるから、

よくよく熟慮しなければならない。

孫子の一番初めに出てきます。

戦争による人的・経済的・財政的な損害、第三国による干渉の危険、

というリスクが非常に大きいです。

そのため、勝算があるか「熟慮」が必要だと言っています。

この文の後に、その「熟慮」のために、勝算の図り方を記しています。

そして、勝算がなければ戦ってはならないことを説いています。

死生・存亡がかかっているのですから、「一か八か戦ってみよう」ではいけないのです。

「一か八かで戦争始めないだろう」と思いがちですが、

太平洋戦争(大東亜戦争)は、「半年ぐらいなら優位に立てる」で開戦したのです。

始めたら戦争の終わらせ方を考えなければならないはずです。

それがよく議論されていなかったようなのです。

企業活動でも

「とりあえず値下げで競合に対抗しよう」(どこまで値下げすればいいのか)

「地道に足で稼ごう」(それで本当にうまくいくのか)

で進めてしまいがちです。

勝算の図り方は、以下の通りです。

一 道。

上の者と下の者とが心を同じにし、

死生をともにして疑いを持たぬようにすることです。

結束・まとまりの強さのことです。

もし味方が上下で不信感を抱いていたり、事なかれ主義で緊張感がなかったり、

足の引っ張り合いをしていれば、いざという時にもろく崩れることになります。

二 天。

陰陽(明るさ暗さ、晴雨、乾湿)、気温、時節などの自然界のめぐりのことです。

例えば今川義元が桶狭間で敗れた原因の一つには、

大雨で織田信長の動きが分かりにくくなったことがあります。

また上杉謙信などの北国の大名は大雪の降る冬は動けませんでした。

他に太陽を背にすることで敵はまぶしくて攻めにくくしたり、

暗闇にまぎれて脱出したり、数多くあります。

この「天」には季節だけでなく、物事を行う時機も含まれると考えられます。

三 地。

距離や険しさ、広さなどの土地の状況です。

戦争にも商売にも有利な土地があります。

しかし一般的には不利であっても有利に働くこともあります。

戦争における背水の陣や、商売における隠れ家的立地などです。

ただし、これらは人間の土地に対する働き掛けが功を奏したことによるものです。

四 将。

知恵、信頼、仁慈、勇敢、威厳などの将軍の人材のことです。

知恵は勉強すれば比較的早く身につきそうに思います。

しかし他の四つは難しいです…。

この「将」は要するに人がついてくるような人間になれ、ということだと思います。

そうだとすると、人々の中でもまれて教わり助け合うことで、

人がついてくるとはどういうことか、が体でわかるのかもしれません。

足軽(百姓?)の子で底辺から上がってきた豊臣秀吉、

人質として今川家から冷遇されてきた徳川家康、

小学校卒で首相になった田中角栄…は、よい「将」だったように思います。

五 法。

規則、治め方などのことです。

規則は合理的か、しっかり運用されているか、

上下の風通しが良く、意見を受け入れる体制ができているか、

訓練(研修)は行き届いているか、などです。

これらを敵味方で比較し、勝算を図ります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする